すずねこ屋

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「ねこー、すーずーねこーーー」
風鈴が夏の風物なら、鈴猫は春の名物である。
「すずねこ屋さん、ひとつ頂戴」
「へい、まいどー、あめしょ、すこて、まんち、お客さんどれにしましょ」
あめしょはアメリカンショートヘア、すこてはスコティッシュホールド、まんちはマンチカンの略である。
「うーん、去年はマンチだったから今年はアメショかな」
「一ヶ、二ヶ、三ヶと三種ござんすが、今年どれで」
「いつもと同じ三ヶで」
「まいどありー」
鈴猫屋は袋にひとつずつ鈴猫を入れている。担ぎ屋台に吊るして、鈴猫に風を当てるなんぞという野暮な事を、鈴猫屋はしない。
アメショの鈴猫を、軒先きに吊るして風が来るのを待っている。ほろほろと春の風が吹けば、陶器の風鈴の形をした鈴猫に、子猫が浮んで、ミーと泣いた。
ちなみに三ヶは鈴猫屋の符丁で、風が三つ吹くと一声泣くものをいう。
ファンタジー
公開:18/01/25 07:46
更新:18/01/25 07:52

一条美紀( 北陸 )

1957/9/11生まれ
新規一転したくて
のそのそとやってます。

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