悪貨が悪貨を駆逐する

A国の外れの外れ、森の奥深くに、貧しい兄弟が住んでいました。

「兄貴よう、おいらは絵だけは自信があるんだ」
「弟よ、俺も印刷機の操作だけは自信がある。偽札を作って、大金持ちになろうじゃねえか。へへっへっへ」

弟がA国のお札そっくりな原図を描き上げると、兄はそれをそっくり印刷します。
たちまち、本物と見分けがつかない偽札の山ができました。
本物ならば、2人で一生働いても稼げないほどの大金です。
兄弟は大喜び。

突然、入り口のドアが開きました。

「国の者だ。お前たちか、偽札作りの兄弟とは」
「ひいいッ！お役人様あ、どうかご勘弁を。」

「ふはは。私は隣のZ国の国立造幣所の者だ。お前たちのような技術者を放っておくとは、A国も長くはない。どうかね、我がZ国の、正式な紙幣を作ってはくれんかね」

2人は、A国の偽札とも比べものにならないほどのZ国の本物のお金を稼ぎ、一生幸せに暮らしました。