米車

「お客さま、当社一推しの『米車』に興味がおありとはお目が高い！
こちら、何の変哲もない自動車に見えますが、エネルギーが一味違います。
名前通り、お米を燃料にしております！電気自動車など過去の遺物です!
なんと運転中に発生する熱エネルギーで、給米口に入れたお米が美味しく炊き上がるのです！！
今だけ当社の田んぼで採れた新米『こめぐるま』を１０キロプレゼント中で…」

先程から１時間もこの調子で営業トークを続けられており、さすがに辟易している。
こんな馬鹿げた車、誰が乗るのだ。

だがこのままでは熱心な営業にひきずられ、契約してしまいかねない。
そうだ、この断り方ならさすがに引き下がるだろう。

「すまんが、私はパン派だ」
「そうでしたか……」

残念さを隠せない営業に、逆に申し訳なくなる。
彼も仕事だ、仕方がない。


「ご安心ください！『小麦車』が先日発売されたばかりです！」