優しくない人

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19時23分。

その男は我先にと環状線に乗り込み、デスクワークで疲れ果てた体をシートに沈める。そしてコンビニ袋から缶ビールを取り出し、飲み始めた。

男の斜め前には赤子を抱いた若い女性が立っている。

横には塾帰りの小学生が座る。お腹を鳴らしては恥ずかしそうに俯いている。

それらを気にもせず、男はあたりめの封を切った。

缶ビールとあたりめから漂う傲慢な臭いが、環状線の中にいやらしく広がった。
しかし、車内は静かである。

目当ての駅が近づいたことに気付き、男はあたりめを急いで平らげた。ビールはまだ残っている。

そして席を立った途端、衝撃。

男は上下も左右も失い、地面に背中を打ち付けた。電車が大きく揺れたのである。

倒れた男の手は辛うじてビール缶を握っていたが、肝心の中身は流れ出て男の股間を濡らす。

無様だね。

優しくない人は、静かにそう思って笑うのであった。
公開:18/01/14 21:10
更新:18/01/14 21:26

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