妄想師ミハル

ある電気メーカーの社長は社員に命じた。

「最近、現実的なことしか言わないやつが多すぎる！　もっと夢を語りなさい！」

悩んだ社員は、近ごろ噂の妄想師を呼ぶことにした。
妄想師とはその名の通り、妄想を得意とする者だ。国の試験を突破した者のみが資格を持ち、自由自在な想像力で様々なことに貢献している。
妄想師のミハルは、依頼を受けてその企業を訪れた。数々の企業で顧問を務める腕利きの彼は、社員たちから悩みを聞くとこう言った。

「こんな掃除機をつくるのはどうでしょう」

ミハルはつづけた。いつの時代も人は運勢を気に掛ける。そこでお坊さん監修で邪気を吸い取る掃除機をつくっては、と。
社員はそのアイデアに感激しつつ、こう尋ねた。

「なるほど！　ですがそれなら、吸った邪気の処理も考えねばなりませんね」

そんなことは簡単だと、ミハルは言った。

「嫌いな人の家の前にでも撒けばいいだけじゃないですか」