ポニーテール奇譚～男性編～

「最近、ポニーテール狩りってのが流行ってるんだってな。うちの娘も、注意するように学校で言われたって」

夜道で口にした友人に、おれは尋ねる。

「なんだそれ」
「ポニーテールの人間をつけ狙って、髪の根元からバッサリ切って持ち逃げするやつのことらしい」
「そんなことして何になるんだ…？」
「それがな、狩られたポニーテールはホルマリン漬けにされて、闇市場で高値で取り引きされるらしくて」

友人はつづける。

「黒髪とか茶髪とか金髪とか、まるで金魚でも愛でるみたいにマニアは好みのものを鑑賞するんだ。若くて艶やかな髪が特に人気みたいだけど、それよりももっと貴重なマニアックなものがあって。なんと、車が買えるくらいの値がつくこともあるらしい」
「それって…？」
「天然の銀髪のポニーテールさ」

友人は歪んだ笑みを浮かべながら、キラリと光る何かを取り出す。

「それも男モノの。そう、おまえのみたいな」