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近所の新しい病院には、こんな看板が出されていた。
「雨傘科」
わたしは首を傾げた。内科や外科、小児科などなら分かる。でも、雨傘科とは何だろう。
中へ入って尋ねてみると、受付のお姉さんは笑顔で言った。
「ここは、折れた傘の骨を専門に治療する病院なんです。ほら」
見ると、待合室に座る誰もが歪んだ傘を持っていた。
お姉さんは、程度に合わせて湿布やギプスで治療していくのだと教えてくれた。
話を聞くと、わたしはすぐに帰宅して、また雨傘科を訪れた。今度は、亡くなったおばあちゃんが大切にしていた水玉模様の傘を持って。先生は、傘を診察して言った。
「複雑骨折していますが、オペで十分治るでしょう」
手術は無事にうまくいき、傘はそのまま入院した。二日たって退院し、あと一か月ほどで完治らしい。
わたしは、おばあちゃんの傘が再び開く日を想像してウキウキしながら、傘のリハビリに励んでいるところだ。
「雨傘科」
わたしは首を傾げた。内科や外科、小児科などなら分かる。でも、雨傘科とは何だろう。
中へ入って尋ねてみると、受付のお姉さんは笑顔で言った。
「ここは、折れた傘の骨を専門に治療する病院なんです。ほら」
見ると、待合室に座る誰もが歪んだ傘を持っていた。
お姉さんは、程度に合わせて湿布やギプスで治療していくのだと教えてくれた。
話を聞くと、わたしはすぐに帰宅して、また雨傘科を訪れた。今度は、亡くなったおばあちゃんが大切にしていた水玉模様の傘を持って。先生は、傘を診察して言った。
「複雑骨折していますが、オペで十分治るでしょう」
手術は無事にうまくいき、傘はそのまま入院した。二日たって退院し、あと一か月ほどで完治らしい。
わたしは、おばあちゃんの傘が再び開く日を想像してウキウキしながら、傘のリハビリに励んでいるところだ。
ファンタジー
公開:17/12/14 21:04
更新:17/12/15 00:03
更新:17/12/15 00:03
秦佐和子
中西優香
イベント
1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。17年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。
◆公式サイト:http://masatomotamaru.com/
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