クリスマスのルールブック

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「はい、もしもし。」

「すまん。」

「なに、いきなり。」

 いぶかしむ妻の声がする。心持ちトーンも低いような・・・

「帰りが遅くなりそうなんだ。」

「ふーん、そう。」

 あ、さらに下がった。

「ごめんよ。」

「いいよ、別に。」

「楽しみにしてたのにね。」

「誰かさんがね。」

「うん、まあね。君達だけで楽しんで。」

「そう、わかった。」

「ほんと――」

 ごめんと、もう一度、謝りかけたその時。

「我が家のイブは、明日来ることにしよう。」

「えっ?」

 受話器が口元からおろされたのがわかった。

『おーい、おちびさん、こっちおいでー。』

 電話の向こうから、子供に呼びかける声がする。次いで、何事かを言い聞かせている気配だけが伝わってきて、そして。

「もしもし、おとーさん、あのね。」

「サンタさん、クリスマスは、おしごとなんだって。」
その他
公開:18/01/11 18:06
更新:18/12/20 03:48

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