闇に打ち勝つお風呂(2)

湯船に湯を張り、入浴剤をキャップ１杯注ぎ、よくかき混ぜる。多すぎても少なすぎてもいけない。湯につかるのは３分間だけ。付属の砂時計で時間を計ると便利です、とのことだった。入浴剤が多すぎたり、湯に長い時間つかりすぎたりすると、やる気や楽しかった思い出も溶けだしてしまうらしい。そろそろと湯船に入り砂時計をひっくり返す。３０秒ほどすると、水面に何かが見えてきた。毎日愚痴ばかりの同僚の顔や、クレームをしつこく入れてくる客の姿だ。思わず水面をかき混ぜると闇はバラバラになり、湯に溶けていった。砂時計の砂が落ち切った時には、すっかり心が軽くなっていた。