あの頃のガム

3
147

地元に帰ると街並みが変わっていた。最寄りのコンビニは無くなり、デイサービスの施設となっていた。変わらないのはこの駄菓子屋くらいだ。
「いらっしゃい」
店の雰囲気も店主のお爺さんも変わらない。

10円のガムを買って包み紙を開けると中には赤い文字で「あの頃」と書かれた紙が出てきた。

「ああ、『あの頃』が出たのね、じゃあこれと交換ね」

差し出されたガムを受け取ると僕の体はみるみる小さくなった。

目の前には4年前に亡くなったはずのおばあちゃんがいた。幼稚園の送り迎えをしてくれていたおばあちゃんは、帰り道に駄菓子を買ってくれた。お母さんには内緒だった。

「お母さんが帰ってくる前に食べなさい」
おばあちゃんにガムを手渡された瞬間、僕は元の姿に戻っていた。

それからというもの、いたるところで10円ガムを買うようになった。

しかし、「あたり」は出ても「あの頃」が出ることは2度となかった。
その他
公開:17/12/25 01:35
更新:18/06/01 18:48

ぱせりん( 中四国 )

北海道出身です。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容