シラスファッション

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江ノ島でふと入った店で、変わった服を見つけた。「いまが旬・シラスファッション!」と書かれたそれはキラキラと透明に光っていて、羽織るとシースルーのカーディガンのように美しかった。婚活用の服を探していた私は迷わず買って、パーティーの日を待ち望んだ。

その当日、新しい服に身を包んだ私の周りには多くの男性が寄ってきた。私は好みの人を発見し、狙いを定めた。彼は草食系らしかったが、いまこそシラスの力が発揮されるときだった。
店員さんの言葉がよぎる。

「これを着れば、シラスのようにうまく捕食されますよ」

さあ、奥手の彼も、そろそろ食いつくころだろう。が、予想に反して会話は途切れがちになり、やがて彼は去ってしまった。
これはおかしい、なんでだろう…。
そのとき私は目を落として、あっと思った。キラキラだった服が鈍い色になっていたのだ。

私は悟った。シラスファッションには、鮮度というものがあるのだと。
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公開:17/12/15 18:13
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田丸雅智( 東京 )

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。17年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。

◆公式サイト:http://masatomotamaru.com/

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