舌もレーシック

僕は3ヶ月前に受けたレーシック手術の経過観察で来院した。他に患者はいなかった。
「見え方などに変化はないですか」
「はい」
「問題無いようですね。今後は定期健診だけで結構です」
「いやー、メガネが無くても良く見えるのは本当にありがたいですね。この調子で舌もレーシックできればいいんですけどねー」
「舌ですか」
「どうしても嫁の作る手料理が口に合わなくて困っているんです」
「それでしたら」
医師は机から資料を取り出して説明を始めた。
「レーシックと同じ機械で、舌の上に膜を張って、何を食べてもおいしいと感じることができるようにする手術がありまして…」


「お前が作る鮭のちゃんちゃん焼きは本当においしいな」
「ほんと？今日のはちょっとしょっぱいかと思った」
「このくらいがちょうどいいんだよ」

手術を知ったその日から5ヶ月間、毎日料理には大量の砂糖と塩が入れられていることなど、知る由もなかった。