ヌケガラ

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「あ〜、今日も疲れたなぁ。」

玄関のドアを開けて帰宅した僕は、靴を揃えずに脱ぎ捨てた。そのまま靴下、ズボン、シャツを脱いで廊下に点々と置き去りにしながら部屋に入る。
ベッドの横の床には、朝の僕が脱ぎ捨てた部屋着がヌケガラのように転がっていた。着替える為に拾い上げようとすると、ヌケガラは僕に語りかけてきた。

「僕は朝の君のヌケガラだ。せっかく脱ぎ捨てた古い殻を、再び着る必要はないよ。」

「疲れてるんだから早く着替えさせてくれよ。」

「せっかく新しくなったのに、君はまた蛹に逆戻りだよ。」

「良いんだ。毎日は同じ事の繰り返しだし、今の自分から脱皮するのは簡単な事じゃないよ。」

そうして、僕は、朝の僕のヌケガラを再びかぶった。人はなかなか変われないものだ。

明日もきっと、目覚まし時計を止めて、少し寝坊をして、大慌てで仕度をして、ヌケガラを床に散らかしたまま、僕は出かけて行くのだろう。
その他
公開:17/12/04 02:53

イロハマイ( トーキョー )

普段は曲を作って歌ってます。
妄想と空想が好きです。

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