右 斜め 45度

最初はいつだったのか、今となっては思い出せない。
18階から乗った職場のエレベーター。四角い箱の右の角に、小さな紙が落ちていた。
レシートの切れ端のような、何の変哲も無い白い紙切れをクシャってしたもの。
それは大理石の床で妙に目につき、拾って、ビルの一階のゴミ箱に捨てた。はず。

当然、気にも止めていなかった。

また、エレベーターの右の角に紙の切れ端を見つけるまでは。

二度目は「あれ？」って思った。むしろちょっと笑った。
三度目は「まさかね」
五度目はとても笑えなかった。

同僚に話しても、皆知らないという。

私はもう 右、斜め、45度 に視線が移せない。

この20階建ての建物の中の誰かが、エレベーターの、右の、角に、「この」紙の切れ端を、何か意思を持って落としている。いや、置いている？ なんで私だけが気づく？

ねぇ、なんで私のポーチには「この」紙切れがこんなに入っているの？