秘密の物置

僕は小さい頃、人に見せたくないものは物置に隠してしまう子供だった。

点数が悪かった算数のテストも、友達から借りたまま返しそびれてしまったゲームも、そんなに好きではなかった子から初めてもらったラブレターも、こっそり書き溜めていた漫画が書かれたノートも、開けずに終わったタイムカプセルも、全て物置にしまいこんだ。

結婚して家庭を持った今でも、その習慣は変わらなかった。接待で行ったキャバクラの名刺や、オークションで手に入れたフィギュアをはじめ、妻が見つけたら怒りそうなものは全て物置にしまっている。

今日は妻に内緒で未だに趣味で書いている漫画の同人誌を隠しに来た。これで8冊目になるが、妻に打ち明けるつもりもない。いままでに発行した7冊の同人誌が入っていた少し大きめのダンボール箱にしまい、麻の布をかけた。

そして、僕は足元でスヤスヤと寝息をたてている「秘密」をそっと2回撫でて、物置を後にした。