昨日までと違う街

もう随分と長い事、僕が暮らしている街。
昨日と変わらぬ街並みを歩いているはずなのに、今日は何故だか、ちょっと違う。

例えば、並木道の青葉は、初夏の風に吹かれて青々と光っていたのに、今日は彩度が低くて物悲しく揺れているように見える。

いつも多くの人で賑わっている、慣れ親しんだ街中も、ゴミゴミとして居心地が悪い。

地面は舗装されて、あんなにしっかりしていたのに、今日歩いてみると、グニャグニャしていて頼りない感じがする。

真っ直ぐにそびえ立つビルでさえ、こちらに倒れて来そうなくらい不安定だ。

昨日、あれだけ泣いたのだから、僕の心はもうスッキリしている。僕は変わらないはずなのに。この街は昨日と変わってしまった。

客観的に見ようとすると、自分があまりに可哀想で、また泣いてしまいそうだから。
僕はこの変な気持ちを昨日と違う街のせいにして、乾いた声で小さく笑ったのだった。