星屑ストーブ

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定年退職した両親を訪ねた時の事。部屋の隅にある薪ストーブが目に入った。
「いいだろう」
私の視線に気づいた父が言った。
「素敵な薪ストーブだとは思うけど、薪を用意するのは大変じゃない?」
「それは星屑ストーブと言って、その名の通り星屑を燃料に燃えるストーブだよ。ごらん」
空気孔のようなところに息を吹くと、瞬く間に火が起き、それは赤、緑、白と様々に色を変えてオーロラのように幻想的な光を放った。私は暫くの間、我を忘れて心を奪われた。
「きれいだろう。その煙突が空から星屑を吸うんだ」
その言葉に我に返った。
「じゃあ、昔 父さんが星屑まみれで帰ってきたのって…」
「そう。星屑ストーブの煙突に入ったからだ。それよりいいのか?まだ仕事中だろう」
そうだった!挨拶もそこそこに私は慌てて家を出た。待たされて不機嫌なトナカイをなだめると、まだまだ沢山のプレゼントを積んだソリでクリスマスの夜空へ飛び出した。
ファンタジー
公開:17/11/18 09:45

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