君の、歌うギター②

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次の日の朝にギターを触ると、今度はギターは何も歌わなかった。代わりに、私の口から昨日のメロディが溢れ出した。歌に合わせてギターを弾いてみると、私が覚えていた4つのコードだけで弾けた。

ギターを掻き鳴らしながら思いっきり声を出して歌う歌は、最高に気持ちが良かった。ギターも、また一緒に歌い出した。部屋で歌う彼に、何度もうるさいなんて言ったことを思い出して後悔した。一緒に歌えばよかった。泣きながら歌い続けた。

彼は、私と、音楽と、一緒に暮らす未来を捨てて出て行ったのだ。

歌い終わるとギターは砂のように崩れて床に散らばってしまった。その砂のようなカケラを手ですくい上げて、植木鉢に入れ、花の種を蒔いた。

私が失くしてしまったものと、彼が捨てていったもののを重さを知って、私は一つ、大人になった。
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公開:17/11/02 23:33
更新:17/12/23 02:32

イロハマイ( トーキョー )

普段は曲を作って歌ってます。
妄想と空想が好きです。

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