具現化スケッチブック

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私は、理想通りの夫と、やんちゃ盛りの息子と暮らしている普通の主婦だ。1つだけ違うのは、不思議なスケッチブックを持っていること。幼い頃に公園で、風変わりな老紳士に貰ったのだ。

「みんなには秘密だよ。必ず鉛筆で絵を描くんだよ。」

私は頷き、スケッチブックを受け取った。キラキラと光沢のある紙に絵を描くと、なんと絵が本物になるのだ。色々な願望を現実にして、私の人生は随分と豊かになった。

しかし、他の人に見つからない様に隠していたのに、ある時、片付け忘れて息子に見つかってしまった。

「お父さんの絵があったから、イタズラしちゃった!」
「なんですって…!」

息子が手にしているスケッチブックに目を落とすと、鉛筆で描いた夫の絵の髪が消されてハゲ頭になっていた。

「他には…何もイタズラして無いでしょうね…?」

「大きな怪獣を描いたよ!」

息子は笑顔でそう答えた。
油性ペンを握り締めながら。
ファンタジー
公開:17/11/12 15:43
更新:17/11/12 18:58

イロハマイ( トーキョー )

普段は曲を作って歌ってます。
妄想と空想が好きです。

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