公衆電話の所在

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雪の降る日のことだった。いつも仕事帰りには妻に何時に帰るか連絡しておくのだが、今日はスマートフォンの充電が切れてしまい連絡ができないままだった。
最寄りのバス停を降りたところで、念のため連絡をしておこうと公衆電話に立ち寄った。財布の中から10円玉を出したが、受話器がない。そのかわり「迷子の受話器を探しています」という張り紙が貼ってある。私はいてもたってもいられず受話器を探しに行くことにした。坂を降りたところにある公園の隅で小さくうずくまり震えている緑の受話器を見つけた。私は懐の中に入れてそっと公衆電話に連れて帰った。公衆電話と受話器は再会を果たしたのだった…

…公衆電話の私は暇を持て余している。雪の中、体を丸めながら通りすぎたなんの変哲も無いサラリーマン1人でここまで想像を膨らませるほどだ。誰も見向きもしない透明な箱の中、私は今日も街の片隅で誰かが電話をかけに来るのをひたすら待っている。
その他
公開:17/11/11 01:35
更新:18/06/01 18:57

ぱせりん( 関東 )

北海道出身です。

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