玉ホーム

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研究室の先輩が30歳で購入したマイホームは、大きな銀色の球体だった。

先輩は球体をこよなく愛し、今も大学で球体の研究をしている。学生の頃は、丸メガネの僕の面倒をよく見てくれた。修士論文は先輩のおかげでなんとか提出できた。

「わざわざ遠くまでありがとう。」「お久しぶりです。すごいですね…」と球体に圧倒されていると、先輩は「僕が設計したんだ」と微笑んだ。
手土産の鈴カステラを渡し、家の中に通してもらった。部屋の形が円形なだけで、中は普通の家とさほど変わらなかった。
それから僕は近況を報告し、先輩は鈴カステラのいびつな美しさについて話した。

あっという間に時間が過ぎてしまった。「また来ます。」と家を出ると、来た時と周りの景色が違う。
「この家は完全な球体に限りなく近いから少しの環境の変化でゆっくり移動して行くんだ。雨が降れば坂を下るし、風が吹けば坂も登るんだ。」と先輩は満面の笑みで話した。
SF
公開:17/11/09 00:16
更新:18/06/01 18:58

ぱせりん( 中四国 )

北海道出身です。

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