オートマチックダンスシューズ(仮)

プロのダンサーの動きを自動で再現してくれるシューズのおかげで、美沙はサークル内で注目され始めた。
下手な私は喉から手が出るほど欲しいのに、高くて手が出ない。変な矛盾。
あんな風に跳ねるように踊れたら気持ちいいし、工藤君も見てくれるんだろうな。そんな事を考えながら今日も一人残って月明かりで練習。
「毎日頑張るな」
振り向くと工藤君がいて、ポカリをくれた。
「私もバイトしてあのシューズ買おうかな。そしたら練習しなくても踊れるし」
すると工藤君は急に怒った声になった。
「そんな事言うなよ。あんなの靴に踊らされてるだけだろ。俺、頑張ってるお前が好きなのに」
突然の事にポカンとしたけど、それ以上に工藤君の顔がみるみる赤くなって「じゃあな」って慌てて帰ってしまった。
しばらく頭がぼーっとして、嬉しさが込み上げてきた。頑張ってたらいい事あるんだな。
月明かりの空の下、私の心は跳ねるように踊っていた。