検索窓

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WEBで検索するときは検索窓を使うものだが、ある空き巣はその窓を割ることに成功してWEBの世界へ侵入できた。
WEB空間は広大で、情報が山積みになっていた。その中で、空き巣は金目になりそうなものを物色する。
ある宝石商のサイトから空き巣は宝飾品を盗みだした。画廊のサイトからは高名な画家の絵を手に入れて、WEB銀行からは電子マネーを窃盗した。
あとは侵入の痕跡を消して去るだけだ。
そう思い、空き巣は情報の山へと放火した。
ところが、火は想像以上にどんどん燃え広がっていく。それに伴い、世の中の検索窓という検索窓から煙が立ち上りだす。
その異常を検知して、消防士によるWEB空間の消火活動がはじまった。そして煙にむせて窓から這いでてきた空き巣も、警察の手により御用となったのだった。
被害者たちは焼けた情報の復旧作業に追われているが、人々がWEB検索をすると、まだまだ焦げ跡の残るページが散見される。
ミステリー・推理
公開:18/04/04 12:11

田丸雅智( 東京 )

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。17年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。

◆公式サイト:http://masatomotamaru.com/

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