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説教は嫌い。でも、今は嫌じゃなかった。彼がひとつひとつ丁寧に包んだ宝物を見せてくれるとき、私は小説を読むのと似た感動を覚える。ごまかさない人。初めてお茶をした日からそうだった。真昼間のカフェで、私は号泣した。昔から我慢できる説教嫌いだった。だから彼は、我慢させないようにしてくれたのかもしれなかった。泣いてもいいよ、って。
言われなくてもわかっている。
そう信じていたとき、ほんとうは何も見えてなかった。それは私にとってあまりに衝撃的な事実で、これまで積み上げてきたものすべてが一瞬にして吹き飛んでしまうのではないかと思う程に恐ろしかった。告白すらできなかった初恋なんかよりも、ずっと、痛かった。けれど心の底では待ち望んでいたのかもしれない。その証拠に、こぼれた涙が悲しみから生まれていないことがわかった。生命が震える音。たぶん、こういうときに人は強くなれる。
彼と出会って、私は泣き虫になった。
言われなくてもわかっている。
そう信じていたとき、ほんとうは何も見えてなかった。それは私にとってあまりに衝撃的な事実で、これまで積み上げてきたものすべてが一瞬にして吹き飛んでしまうのではないかと思う程に恐ろしかった。告白すらできなかった初恋なんかよりも、ずっと、痛かった。けれど心の底では待ち望んでいたのかもしれない。その証拠に、こぼれた涙が悲しみから生まれていないことがわかった。生命が震える音。たぶん、こういうときに人は強くなれる。
彼と出会って、私は泣き虫になった。
その他
公開:18/04/04 22:18
更新:18/04/08 22:02
更新:18/04/08 22:02
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400字物語
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各話完結
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