見透す眼鏡

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「…やった。とうとう完成したぞ!」
僕がそう言うと、研究室が歓喜の声で溢れた。
何十年もかけてようやく出来た成果を手に、僕は達成感で胸がいっぱいだ。
それは一見何の変哲もない眼鏡だが、人の感情が見えるという驚くべき機能を備えているのだ。

この眼鏡を作るために、色々なものや多くの時間を犠牲にしてきた。
若い頃から土日も休まず、深夜までずっと研究を続けてきた。
子供が産まれた時も駆けつける事が出来ず、見れるのはいつも寝顔だけ。妻にも長い間苦労をかけてしまった。

でもこれでやっと家族とゆっくり過ごすことが出来る。特許収入で十分な稼ぎもあるだろう。

今日はお祝いにケーキでも買って帰ろう。

2年後。

思った通り、眼鏡は爆発的にヒットし、社会現象となった。

この眼鏡で得た収入の一部を、今月も妻の口座に振り込む。
僕の眼鏡は、一番大事な人たちの感情は見透せなかったようだ。
SF
公開:18/04/04 19:32
更新:18/04/04 19:37

WAかめ( 山の中 )

ぽやぽやと思い付いた物語を書いております。素晴らしい作者の皆様の作品を読みながら勉強中の万年初心者。よろしくお願いいたします。

マイペースに投稿再開していければ良いなぁと思ふ今日この頃。

不勉強なもので、もしどなたかの作品と似た内容を投稿してしまっていた場合はご指摘頂けますと幸いです。
 

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