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電話越しに彼女の泣きそうな声が響く。
「別れたくないってのは彼を好きなんじゃなくて、他の女に取られるのが悔しいだけなのかも」
そんな事を僕に話すのは『別れないほうがいい』と言って欲しいからだ。彼女はまだあの浮気野郎の事が好きなのだ。
「明日映画でも観ない?気分転換に」
彼女は小さな声で「うん」と頷いた。

たぶん彼女は誰かに側にいてほしいだけだ。たまたま選ばれたのが僕だっただけで。

次の日。僕はまだ自分の立場を決めかねていた。ふと、少し前に聞いた彼女の声を思い出した。
「この指輪はね、つきあって最初の誕生日の時にもらったやつ」
そう言って彼女は大事そうに指輪に触れていた。

彼女が人ゴミの中から僕を見つけて歩いてくるのが見えた。
よし。僕は小さく深呼吸した。

これは賭けだ。
もし彼女が指輪をしてたら今まで通り友達としてつきあう。
でも、もし、彼女が指輪をしてこなかったら。
その時は…。
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公開:18/04/04 16:48

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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