ずるっとん

　夜中、奇妙な音で目が覚めた。
　ずるっとん。
　何かを引き摺って歩いているような音。
　寝ぼけた頭で考える。一体何だろう。
　仕掛けた粘着シートに捕まったネズミがそれを引き摺ったまま逃げようとしているのか。
　いや、あれはきちんと捨てた。
　あれから仕掛けてないからネズミじゃないはず。
　そのほかに何かあったっけ――ＺＺ、あれかな、あれ――あれは――ＺＺＺまだ捨ててなかった？――いや、捨てたよね――そうそう、苦労して捨てた――ＺＺＺＺ――捨てた？――うん捨てたＺＺＺＺ
　ずるっとん。
　はっ。そうだ、まだ捨ててなかった。途中面倒臭くなってそのままにしておいたんだ。でもまさか――ははは、まさか――ＺＺＺ
　ずるっとん。がちゃ。
　はっ。
　ドアの開く音に今度ははっきりと目が覚めた。
　殺したはずの夫が這いながら部屋に入ってくると、ぶら下がった切断途中の頭を持ち上げこっちを向いた。