今日もどこかで

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アラブの内戦の激しい地域から帰ってきて一月も経たないうちに君は言った。
「あそこには私の、私達の助けを待っている人がいるの。」
彼女は一度決めたら頑として聞かない。それにナイチンゲールであることに誇りを持っている。さりとて自分は怖がりだからついていく勇気もない。いつものように仕事を理由に同行しないことを謝った。
「いいのよ。気にしなくて。役立ち方だって人それぞれでしょう?」
彼女の一本気の強いところ、サバサバしたところが特に好きだ。
そして2、3ヶ月と経たないうちに政府の渡航禁止の警告を無視して再び彼女は戦地へと赴いた。

あれから数カ月、NGOから手紙が届いた。彼女は爆撃の巻き添えで行方不明、彼女の居た建物は砲弾が弾着した場所の中心部付近だったらしい。遺体の回収が出来なかったことに対する謝罪が添えてあった。
「僕は奇跡を信じてる。」
呟きとは裏腹に目から滴がはらはらとこぼれ落ちていった。
その他
公開:18/04/02 23:11

ひさみん

ショートショートというよりも短編小説、掌編小説という感じになってしまうかもしれません。
自分のペースでやっていこうと思っております。
ショートショート・ガーデンにアクセスする頻度は高くありません。
1回のアクセスで多くても10作品見るかどうかです。すみません。

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