美しい夜

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高いビルの最上階のカメラが眼下を捉えている。
映し出されている画面には闇に光る点が等間隔に並んでいた。夜の中で機械たちが働いているのだ。
与えられた命令に忠実に道を伸ばし、建物を作っている。
付近に人間がいた場合を考慮されたアルゴリズムにより機械たちは音を出さずに作業を行なっている。静かに踊るようにブロックを組み上げていき、壁を塗り、廃棄物は掃除ロボが運び、滑るように進むトレーラーで郊外に運ばれていく。
工事さえも人間の目を楽しませるように行われるようになって何年経過しただろうか。
リズムよく淡々と同じ速度で全てが並んで動く様は壮観であった。
光の一つ一つが明滅し、闇夜の不安を消していく。決まった時間になると、それらの放つ白光が赤や青など様々な色を変え、見るものを飽きさせない。夜の大陸を光の道が休むことなくどこまでも進み続ける。

ただ、惜しむらくは、この世に人間はもういないということだ。
SF
公開:18/04/02 23:09

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