愚かな男

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大きな港町。世界で一番の物知りがいると聞き、高名な学者がやって来た。
「こんな場所に私以上の知識を持つものがいるとは思えんが」
紹介者に大金を払い、ようやく連れて来られたのは、街一番の娼館。
現れた娼婦に学者は踏ん反り返って言った。
「さあ、早く世界一の物知りを出してもらおうか」
「私が世界一の物知りですわ」
学者は顔を真っ赤にして怒った。
「儂は世界中の本を読んだ。こんな下賎な者が世界一などありえない」
娼婦は嘲笑した。
「世界中を旅した男が私のところへやって来て、寝物語に見て来た世界を語るのです。若い水兵も軍人も海賊も、砂漠の国の王もいました。あらゆる身分の男が世界中から持って来た情報が私の所に集まります。種を明かせば単純な話。なのに貴方はハナから娼婦だからと見下した。私が欲しいのは広い世界の情報。狭い世界に用はない」
娼婦は店の男を呼ぶと、男を箱詰めにして連れて行かせた。
その他
公開:18/03/30 23:00
更新:18/03/30 23:01

堀真潮

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