流れ月

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ある日、月が流れ始めた。流れ星のごとく高速で地球の周りを回り始めたのである。そのあまりの速さのため、月風が発生し、地球上には突風が吹き荒れた。

団子屋は困った。お月見をしようにも、空にぽっかりと満月が浮かんでいるということがなくなってしまった。満月は超高速で流れていく。商売あがったりだ。

月は普段の称賛に慣れてしまっていた。神秘的な雰囲気を醸し出す自分に、さらに魅力を加えようと思った。その結果が流れ星の真似である。神秘性にさらに願掛けを加えれば威力百万倍。空を支配できるほどの魅力を備える存在となれる。

人間は月の思惑通り、流れ月に願いを唱えた。しかし、すぐに飽きてしまった。毎日高速で流れていく月。必ず流れる月。普遍的なその状況に、神秘性は失われた。月の思惑が外れてしまった。

残ったのは月風と、団子屋の悩みだけだった。
その他
公開:18/03/31 14:36

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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