ボタン焼き

とある鉄板焼き屋で、ボタン焼きというメニューを注文した。
目の前の鉄板で調理しながら、店の大将がボタン焼きについて説明してくれた。
何でも、モダン焼きとほぼ同じなのだが、天かすの代わりに服のボタンを入れ、また、そばの代わりに糸を使うそうだ。
ボタンと糸は相性が良いらしい。
「企業秘密ですが、ボタンや糸も食用ですから安心してください」
大将の言葉を信じ、私は出来上がったボタン焼きを恐る恐る口に運んでみる。
……味も食感もモダン焼きそのものだ。
調理の様子を見ていないと、とてもでは無いがボタンと糸を使っているとは思えない。

その時、いつのまにか袖に撥ねていたソースの異変に気が付いた。
袖についたソースは固まりながら円く変形していき、そのままボタンのように袖にくっ付いてしまった。
「言い忘れてましたが、ソースも企業秘密です」
そう言う大将の前掛けには、沢山の茶色いボタンが付いていた。