頭山々。

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──頭山という落語、知っている?
俺は恋人の瞳に映る夜桜を見つめながら話し始めた。
ケチな男が道に落ちているサクランボを種ごと食べた。
すると翌朝、男の頭の上に桜の芽が生えた。
切っても切っても生えてきて、ついには大木となり、夜ごと大勢の花見客がやって来て、どんちゃん騒ぎ。
辟易した男はえい!と桜の大木を引き抜いた。
頭に大きな穴が開き、今度はその穴に水が溜まり……と災難が続き、男はついに自分の頭に出来た穴に飛び込み、死んでしまう。
──何とも馬鹿らしい話なのだけれど、子供の頃は怖くてね。
──花見に連れて行かれても、大人たちが騒ぐと、大きな男の手が現れて桜の木を引き抜いてしまうと思ったものさ。
そう言った矢先、地面が大きく揺ぎ大きな手がにゅうと現れる……わけは無く、

何の事はない。俺の頭の桜に花見に来ていた力士たちが、木の幹で突っ張り稽古を始めたので目眩がしただけだった。

どすこい。
その他
公開:18/03/30 00:42

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
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◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
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【note】400字以上の作品や日常報告など
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