旅と猫

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 あいつは半年から1年すると旅をして旅先に逗留する。そしてまた半年から1年するとそのまままた新たな旅先へと向かい逗留する。有無を言わさず私も一緒に連れて行くのはどうにかしてほしい。でも私のお気に入りのタオルケットを一緒に持ってくるからしばらくすると許してしまう。逗留先の安全確認は私の役目だ。もしかしてそのために私を連れていっているのだろうか。
 ある日のこと、数日あいつが帰ってこない。お腹の空き具合もそろそろ我慢の限界と思っていた頃に何人かの黒服たちが来た。久々に見た顔もある。しばらくすると私はあいつの実家に帰った。
 あの匂い、この匂い何もかもが懐かしい。しかしそろそろあいつの顔がみたい。徐々にあいつの顔を忘れてきている。でも匂いは覚えているから心配はいらない。
 今度あいつが帰ってきたら説教しよう。そう思いながら午後の暖かな日差しの中、いつものお気に入りのタオルケットの上で私は微睡む。
その他
公開:18/03/26 22:38

ひさみん

ショートショートというよりも短編小説、掌編小説という感じになってしまうかもしれません。
自分のペースでやっていこうと思っております。
ショートショート・ガーデンにアクセスする頻度は高くありません。
1回のアクセスで多くても10作品見るかどうかです。すみません。

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