桜が咲く頃に

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昔、好きな人が言った。大切なのは好奇心だよ、と。とても頭のいい人だった。身長が170cmないことと、横爪なことをすこし気にしていた。

大切なのは好奇心だよ。私はそれを小さく声に出してみる。これといった趣味など、特にないことは今も変わらない。でも、勉強することが面白いと思える分野を見つけることができた。心理学。私は大学生になり、講義の時間に眠らなくなった。そして思う。彼はきっと、日常に、彼自身の中に面白さを見つけるクセを身につけていたのだと。外からやってくるあらゆるものに自分を真剣にぶつけていたんだと。それは彼の強さであり、美しさだった。よくわからない言葉でもよかった。

どうして私を好きになってくれたのか本気で考えてみるけれど、彼がとても頭のいい人で、私がそうではないためにうまくいったのかもしれなかった。私はそれをとてもすばらしいことだと思い、横爪の輪郭を思い浮かべる。桜の季節が来た。
恋愛
公開:18/03/26 22:01
更新:18/04/08 22:05
小説 恋愛 短編 ショートショート 400字物語 一話完結

yuna

400字のことばを紡ぎます。

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