幽霊の落としもの

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 うわ。ウソだろ。
 視えてる。半透明の幽霊。

 真昼間の公園の、アンティーク風のベンチの前。

 白く助けた女の子が、地面に這いつくばって何か探してるみたいだ。

 あー……何度見直しても「視える」。

 うーん……。

 僕は少し近づいて、その様子を良く視てみることにした。

 年の頃は僕と同じくらいかな。プリーツの入ったスカート。薄手のブラウス。肩まで黒髪を後ろでバレッタで留めている。

「あの」

 僕は恐る恐る声を掛けた。
 彼女の動きがピタリ、と止まる。

「落としものですか? 探すの、手伝いましょうか?」

 彼女は驚いた顔で僕を見て、そのあと少し寂しそうに笑った。

「ありがとうございます。でも私も、自分が何を探しているのか分からないの。探さなきゃいけないってことだけは、はっきりしているのだけど」

 彼女は僕にぺこりとお辞儀をすると、また落としものを探し始めた。
ファンタジー
公開:18/03/24 01:43

木船田ヒロマル

カクヨム×B☆Wコラボコンテスト受賞作でデビュー。
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