し ず む

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夜の海に投げ出された。
自分を乗せていた小さな舟は、波にさらわれて、その姿はもう見えない。
仰向けのまま、ゆらり、ゆらり、と波間を揺蕩ううちに手足は冷え、体の感覚を失いつつある。

ぼんやりとした意識の中で
「ああ、きれいだな」
と、天上に広がる景色のことを思う。

人工的な光の無い大海原で見上げる、深い藍色の空には、数多の星が浮かんでいる。
星々の淡い輝きを、海はいつも眺めているのだろうか。

——そうだとしたら、羨ましい。

潮の音を聞きながら波に揺られていると、だんだんと瞼が重くなってきた。

海水が柔く全身を包み、水が肌に浸み込む。
体中の細胞ひとつひとつが、水の分子と融けあうのを感じる。
波と、海と、自分の境目がなくなってゆく。
いしきが、とけて、
みずに、
なる



東の空がぼんやりと白む。
水平線から溢れ出す光が鮮やかに染め上げる朝は、海の色をしていた。
その他
公開:18/03/24 00:59

ほしのうみ

行き場をなくした文字の羅列たち。

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