海老桜

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土曜日、俺は木村にお花見に誘われた。しかし彼は今、登山服に虫網を持っている。
「お花見…だよな?」
「そっか。お前よそ者だから、沼津の花見を知らないのか。」
「は?」
「ここの桜は『海老桜』って言うんだ。今日は大漁だぞ!ま、30分は登るけどな。」
そう言うと、木村は軽快に山を登って行く。海老桜?大漁?意味が分からないまま、俺は必死に彼の背中を追い、やっと桜の木を見つけた。
「本番はここからだ。」
木村が言ったその時、山頂から風が吹き下した。
海老桜の花が散る。瞬間、俺は目を疑った。空中で海老たちが踊っているのだ。木村はそれを一気に虫網ですくう。
「大漁!じゃ、お花見としますか?」
木村は海老を水で洗うと、豪快に醤油をかけて俺に差し出す。
「ほら。旨いぜ。」
一口食べて、笑みがこぼれる。めちゃくちゃ旨い。俺たちは駿河湾を臨みながら、春の宴を日が暮れるまで続けた。
ファンタジー
公開:18/03/25 17:59
更新:18/03/25 20:46

あおい( 北海道 )

結婚し、幸せになりを潜めて3年。
再び書きたくて登場。
多分そのうちまた消える。

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