心の器

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昨年、外国の医者が、日本ではそれぞれのご飯茶碗が、その人の心の器を具現化しているという論文を発表した。

厭きれることに、この説は日本国民の心を奪った。

人々はご飯茶碗で相手を判断するようになったのだ。
単に大きければ良いのではない。重くてもプレッシャーを与える人と評され、割れやすくては扱いづらいと言われてしまう。
第一、大きすぎる茶碗では、その器に盛ったご飯を食べきれず、見栄っ張りの嘘つき野郎と烙印を押される。
国民は茶碗選びに心血を注ぎ、食器業界は様々な新製品を連日売り出す。
美大で陶芸を学んでいた私は、それまでの暗黒求職期間が嘘みたいに内定が出て、今では“若手作家の手に馴染む斬新茶碗”と売り場でコーナーを設けられたりもする。
外人博士万歳だ。
毎日毎日、他人の心の器を作りながら、でも私自身は全くエセ科学なんて信奉しちゃいない。
だって私は米アレルギー、人間失格らしいから。
その他
公開:18/03/22 22:37
更新:18/03/23 00:10

途川ひとな

読むのも書くのも好きです。
頭の中を伝えることが苦手なので、訓練としてたくさん投稿できたらなと思っています。上手くなりたいので、アドバイスいただけると嬉しいです。

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