献血

ふと窓の外を見ると、自宅前に、献血カーが停車した。

なんだろう？

しばらくして、白衣を着た男が一人で訪ねてきた。

「献血にご協力ください。血液が不足しています」

「そんな気には、なれないな」

私は何度も断ったが、男は一向に引き下がろうとはしない。
説得すればするほど男が馬鹿に見えてくるのだ。

「どうか、そこをなんとか、少しで結構ですから」

今度は鞄からフリップを取り出して日本の献血率の低下だのどうだの熱心に語り出した。何の説得力もなかった。

「少なくとも、あんたみたいな馬鹿に協力するやつはいないだろうよ」

「なにをおっしゃっいます。あなたのようなお若い紳士こそ、献血すべきですよ」


「じゃあ聞くが、その鋭い二本の牙、どう説明するんだ」