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渦巻く嵐の中では家は飛ばされ、木々は倒れ、雨水に浸りすぎた草は色を悪くしている。土砂降りで鼻の先も見えず、延々と続く雨と風が吹き荒び、生き物の息吹はどこにもなかった。
そんな嵐の真ん中にぽっかりと空間が空いている。
そこでは緑は青々としており、中心に一軒の小さな家が建っていた。
家の前の椅子ではやせ細った青年が力なく空を見上げていた。
綺麗な青い円となっている空と、周りの壁のような黒い雲をどちらともなく見ている。
肌はカラカラで、目は落ち窪んでいる。周りの嵐の音が聞こえていたが、青年の周りには風ひとつ吹かず、穏やかな緑の草原があった。
青年以外の人は嵐の中に立ち向かい、もう帰ってこない。
涙も枯れた青年はただ空ばかり見ている。
一羽のカラスが青い円から降りてきて、青年に言った。
「どうして君はここから出ないの?」
「出れないんだ」
青年は朦朧としながら続けた。
「台風に目をつけられている」
その他
公開:18/03/20 23:55

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