鬼の角は爪みたい

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幼稚園の頃、私の左額に角が生えた。
ぷっくりふくれた、1円玉くらいの直径の、できものみたいな角だった。
母は、女の子の顔にこんなものがあっては大変と、遠くの病院まで毎週連れて行ってくれたけれども、実は私は、この角が好きだった。
肌色で、すべらかな山みたいで、ちゃんと硬くて立派な片角だった。
頭山という落語を知ってるだろうか。私はあの話がおっかないけど好きだった。それと同じ。怖いけれど、不思議で孤独で、特別なものに思えたの。
病院で治療の後に被せられる、白い玉ねぎネットみたいな物の方がよっぽど不愉快な子供だったんだ。
角もネットも、母と医師の腐心のお陰で、1年ほどで消えてしまった。

もう、あの不思議な角は生えてこないけれど。今でも時々思い出して、片角に私は力を貰う。不思議で孤独で素敵な、特別なもの。
文章を書きたいと思うとき、たまにあの角のことを考えるよ。
その他
公開:18/03/21 22:30

途川ひとな

読むのも書くのも好きです。
頭の中を伝えることが苦手なので、訓練としてたくさん投稿できたらなと思っています。上手くなりたいので、アドバイスいただけると嬉しいです。

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