メニューにない花

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私は古い友人の紹介で華道大原流家元の自宅に来ていた。
流石は家元の家だけあって庭先には美しい日本庭園が広がっている。
えろう、すんまへん。遅くなりました。
構いませんよ。
そうは言ったが私は少し腹が立っていた。彼女との約束では昼に会う予定だった。それなのにもう夕方である。
だから私は彼女に無理な注文をした。
メニューにはない花を活けて貰いたい。あなたなら出来ますよね。
メニューにはない花どすか。畏まりました
そう言うと彼女は水面に花弁を散らした。
これでよろしゅうおすか。
えっ、これのどこがメニューにはない花なのですか
もうすぐ分かります。
彼女の言う通りしばらく待っていると辺りは暗闇に包まれた。明かりと言えば庭の石灯籠ぐらい。
おやっ、先ほどの花弁が光り出した。いや、違う。庭全体が光っている。月明かりに照らされて。
私は水面を覗いた。するとそこには花が一輪咲いていた。雲間に咲く月の花が
公開:18/03/19 23:52
更新:18/03/19 23:58

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