デリケート夕立

おや、お客人。随分とお疲れのご様子で。
かなり遠くから来たんだねえ。となると…夕立をお求めですかい。
良かったねえ。これが最後のひとつだよ。
こいつひとつありゃ、畑で眠りこけてる日照りの神様だって裸足で逃げ出しちまって代物さ。
ただね、扱いには気を付けておくれよ。
下手に転がすと、桶をひっくり返したみたいに水が流れちまうのさ。
遠くの方で伝え聞いた話だと、それで村ひとつ沈んじまったんだと。
それと、使っていいのは夕方だけだ。間違っても朝に使っちゃいけないよ。

ああ、お客人。素直に聞いてくれてありがとよ。素直ってのは良いことだよ。
ほれ桶はおまけしてやるから大事に運ぶんだよ。…毎度あり。
詳しい扱い方は紙に書いてあげたから、村に帰ったら読むといい。



『お客人。最後に一番大切な事を1つだけ。
使う時には、必要なだけ水をたっぷりあげてくんな。』