飛行場

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町を離れて八年が経った。私の育ったアパートはまだ残っているだろうか。バーのおじいちゃんや定食屋のおばちゃんは元気だろうか。
彼は、約束を覚えているだろうか。
強風のせいで機体を大きく揺らしながら、飛行機はどんどん高度を下げる。
飛行場が近付き、機体は大きく旋回を始めた。海が輝いている。
あの日直視できなかった海浜公園を通過し、機体は大きな音を立てながら滑走路に着陸した。
何せ八年前のことである。覚えていたらラッキー程度の感覚で、私は速度を下げる飛行機の窓から展望デッキを見上げた。

あの日と変わらない彼が、あの日と変わらない青空を背景にこちらに向かって大きく手を振っていた。

その日、一際強い南風が吹き、薄紅色の花弁が町を覆った。
それはまるで二人の再会を祝福してくれているようだったという。
ファンタジー
公開:18/03/19 13:11
更新:18/03/19 13:58

TAMAUSA825( 東京と神奈川 )

登場することが趣味です。

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