トワイライトホワイト

　彼からバレンタインのお返しが届いた。嬉しい……。私を選んで呉れたのだ……。

　梱包を解いて箱から出すと、想像通り――いや、想像以上に美しい花が眼に映つた。
　私は日当りの良い場所に其を置くと、改めてうつとりと眺める。彼には直接会つた事は無いが、画像で見てゐた貌の、透き通る様な肌其の儘の美しい花であつた。

　忘れない内に此れを届けて呉れた花屋に教へられた通りに水を遣る。其の遣り方はかうだ。先づ綺麗な水を用意する。其処に針か何かで指先を刺して血を一滴垂らす。ぽとり……。此れ丈である。

　其れから毎日、私は其の様にして水を遣り続け、其の時が来るの未だか未だかと待ち侘びてゐた。そして漸く、夏めいて来た頃の朝、待望の其の時が訪れたのである。
　――可憐な、甘く芳しい香りのする果実が生つてゐた。後数ヶ月もすれば其の中から、彼に良く似た貌の子供が産まれるだらう。

　――私は親と成るのだ。