町の招き猫

1
196

引っ越してから半月、八百屋で野菜を見ていたら、八百屋の中に猫がスタスタと入って行った。猫は通路でゴロンと横になった。

「あらあら、そこで寝てるとお客さんの邪魔になるわよ!」
店員が声をかけるが、猫はピクリとも動かない。

「私、猫好きなので、大丈夫ですよ」
店員はため息をついて話を続けた。
「でもこの子、町の招き猫だから仕方ないんです」
「招き猫ですか?」
「普段は自由気ままに、この商店街で過ごしてるんですけどね。この子がいるとお店が繁盛するんですよ」

会計が終わって店を出ると、私と同時に足元から店を出て行った。

その日は、飲食店でもエステサロンでも靴屋でも、必ず近くにに招き猫がいた。

「今日、どこに行ってもこの子がいる気がします」
服屋で招き猫に見つめられながらカード支払いのサインをすると、受け取った店員が言った。

「お客さんのお名前、福田さんですから、きっと招かれたんですね」
その他
公開:18/03/20 11:46
更新:19/07/09 23:59

ぱせりん( ひろしま )

北海道出身です。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容