タネも仕掛けももうない
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通ってるバーは月一で手品ショーをする。毎回同じ黒い燕尾服にシルクハットの手品師が来る。彼には気になる事があった。彼の燕尾服の背中の線、襟から尾の割れ目にかけてジッパーが付いていたのだ。私は手品のタネかと毎回見ていたが、そのジッパーが開くことはない。
今日は手品ショーだ。私は中央寄りのカウンター席に座った。手品師の立ち位置の真後ろだった。
ショーが始まった。鳩が手から現れて帽子の中へ消え、観客から拍手が起きる。手品師がお辞儀し一歩下がったのを見計らい私は背中のジッパーを下ろす。
そこから先程の鳩が飛び出た。タイミングよく客が来て、鳩はドアの間から外へ飛び去ってしまった。
私の足元に縮んだ手品師の抜け殻があった。ジッパーの中は空洞だった。
観客は今のも手品かとショーの再開を待った。手品師の抜け殻にはもうタネも仕掛けもない。結局再開はされず、そのバーで手品ショーが行われることは二度となかった。
今日は手品ショーだ。私は中央寄りのカウンター席に座った。手品師の立ち位置の真後ろだった。
ショーが始まった。鳩が手から現れて帽子の中へ消え、観客から拍手が起きる。手品師がお辞儀し一歩下がったのを見計らい私は背中のジッパーを下ろす。
そこから先程の鳩が飛び出た。タイミングよく客が来て、鳩はドアの間から外へ飛び去ってしまった。
私の足元に縮んだ手品師の抜け殻があった。ジッパーの中は空洞だった。
観客は今のも手品かとショーの再開を待った。手品師の抜け殻にはもうタネも仕掛けもない。結局再開はされず、そのバーで手品ショーが行われることは二度となかった。
その他
公開:18/03/18 00:28
読んでいただきありがとうございます。
話のおもしろさ云々はひとまず置いといて、とりあえず一本完結させることを重視して書いてます。
朗読ラジオ「月の音色リスナー」です(^o^)/
低浮上中なのでコメント返し遅れるかもですが必ずお返しします。
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