味わう指先

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あなたは人間の味わいというものをご存知だろうか?
私は知っている。今まで多くの人を味見し、楽しんできた。
幼子の粉ミルクの香り、軽やかな肌の質感。老人の乾いた皮膚の苦味。脂ぎった男の、意外にも優しく柔らかな指。
ああ、どうか気を悪くしないでほしい。
気味が悪いと思うだろうが、これは一種の自己防衛。あなただって、肌の合わない相手はいるだろう。それと同じ。味の悪い人間には近づかないに限る。
目の見えない私は、指先で物事を観測する。
そう、実際に口にしているわけではないよ。
物心ついた頃から、私は指先で物を味覚することができた。きっと、目の代わりに神様が与えたギフトだね。
この指先で私は充分世界を楽しんでいるし、人の良し悪しがわかるので便利だよ。
ああ、話が逸れたね。
つまり、私が何を伝えたいかと言うと、あなたほど味の良い人間に出会ったのは初めてだってことなんだ。
私はあなたが大好きみたいだ。
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公開:18/03/17 23:54

途川ひとな

読むのも書くのも好きです。
頭の中を伝えることが苦手なので、訓練としてたくさん投稿できたらなと思っています。上手くなりたいので、アドバイスいただけると嬉しいです。

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