診察室の孤独

0
174

何もかもがうるさいと感じることがある。そう言うと、精神科医は諭すように私の目を見つめた。
「誰にだってそういうときがあるものよ。人間だもの。それに大抵の場合、そんなときにほんとうに疲れているのは身体の方なの。睡眠不足だったり、食生活が乱れたりしているのではないかしら」
私は絶望した。それが仮に正しかったとしても、まったく意味がないのだ。孤独と親しくなるために私はここに通い続けている。今はそう思うことにしている。しばらくは希望からかけ離れた場所にいたかった。そのほうがずっと落ち着いた。生きようと思えた。
板チョコを1枚まるごと食べることも、夜更かしをしてでもファンタジーを読むことも、私にはすこぶる健康なことに思える。むしろ大切なのはそっちじゃないかとさえ。そっちが現実ならいいのにと。
ほとんどの場合、甘いものがそばにいるときの人はとろけそうな笑顔だ。私はそのことを心のなかだけで確かめる。
その他
公開:18/03/17 22:43
更新:18/04/08 22:06
小説 短編 ショートショート 400字物語 一話完結

yuna

400字のことばを紡ぎます。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容